もう年末ですが・・・。
クリスマス前から書き始めていた(せめてもの言い訳)クリスマス短編をお届けします。ウネですよ～。
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Christmas
「ああ、降ってきちゃった」
昼過ぎから雲が多くなってきて、これはもう、夜は雨だろうなって思っていたけれど、実際に降られると、やっぱりどこか陰鬱な気分になる。別に、これから車で家に帰るだけじゃんって言うと、それはそれで怒られるんだから、ドンへ心は理解するのが難しい。
「まぁ、前から食べたいって言っていた、ケーキ買えたんだから、そんな顔するなって」
「ん・・・」
別に面倒だとか思ったわけじゃないけれど、つい無意識のうちに出てしまったため息が、思った以上に大きく車内に響いて、何となく気まずくなる。お互いに何も言葉を発することなく、しかも音楽もラジオもかけていないから、無音で本当につらい。
横目でちらりとドンへの顔色を伺うと、ずっと窓の外を眺めている。これじゃあ、俺に話しかけるなって言っているようなものじゃないか。ヒョクはもう一度、今度は出来る限り小さく、響かないようにため息をつくと、そのまま車を走らせた。
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ドンへが異変に気付いたのは、お互いに何も会話をしなくなってから、30分程度経ってからだった。窓の外を眺めていても、ぼんやりとしていたので、道なんて考えてもいない。ただ何となく、家に帰るんだろうなって思っていたから、ふと前を向いて、道路標識を見たときに、行き先が家じゃないってことに気付いて驚きのあまり、思わず声をあげてしまった。
「え？あ、・・・ヒョク？」
「・・・何だよ」
「あ、いや・・・その、何処向かってるの？」
「・・・内緒。ってか、やっと気付いたのかよ」
「ごめ・・・だって」
「もうすぐ着くから」
ドンへの言葉を遮って、ヒョクにそんな風に言い切られてしまうと、まるで黙ってろ。と、でも言われているような気分になる。こんな雰囲気になるつもりなんてなかったのに。夜にお互い予定を空けて、一緒に居られるのをどれだけ楽しみにしていたか、そんな事を考えると悲しくなってくる。
俺が食べてみたいって言ったケーキを用意してくれたんだから、それで良かったのに。どうして何時も俺は、「これ以上」をヒョクに求めて、彼に嫌な思いをさせちゃうんだろう。
せっかくのクリスマスなのに、本当に面倒くさいやつだって思われちゃったかな。
またお互いに何も言葉を交わす事無く、気まずい雰囲気が流れる。何処に行くのかなって考えながら、通りを見ていたら、だんだんとヒョクが何処に行こうとしているのか、解ってしまった。
だって、その場所は俺がいつかヒョクに、行ってみたいって話した場所だったから。クリスマスになると、すっごいイルミネーションで全体が包まれて、幻想的な世界になるんだって！って、ヒョクに言ったら、ものすごくつまんなそうに、あっそうって返されちゃったのに。ちゃんとヒョクは、あの時の会話を覚えていてくれたんだ。
「ほら、着いたぞ」
「・・・っ、わぁ・・・キレイ・・・！！」
ヒョクの優しさを再確認したり、自分のした発言に反省したりして、しっかりと涙目になっていたから、目の前に広がるイルミネーションを見た瞬間、全てが溢れて涙が零れる。
俺のリアクションをしっかりと見ていたヒョクが、ポロポロと涙を零す姿を見て、慌てて大丈夫か？って聞いてくれる。彼の惜しみない優しさに、余計涙が溢れちゃって、何だかもう、止める事が出来ない。
「・・・泣くほど嬉しいなんて、本当に女みたいだな・・・」
「っ・・・だって・・ぇ・・・」
シートベルトを外して、ドンへを引き寄せて抱き締める。ヒョクのぬくもりがたまらなくて、ドンへは無我夢中で抱き締め返した。キスしたいなって思った瞬間、ヒョクが唇を重ねてくれるから、嬉しくなって、思わず舌を絡める。
好き、好き、やっぱ俺は、ヒョクの事が大好きだ。
「ヒョク・・・ごめん、好き、大好き・・・」
「うん・・・あ、ドンへ、窓の外、見てみろよ」
「え？何・・・っ、わあっ！！」
いつの間にか憂鬱でしかなかった雨は、雪に変わって、目の前に広がるイルミネーションと重なり、言葉に言い表せないくらいの幻想的な風景を作り上げていた。別に雪なんて珍しくも何とも無いけれど、好きな人と、特別な日に見る雪は格別だ。
「・・・っ、ほら、早く帰るぞ、せっかくのケーキがムダになる・・・それに」
「へ？・・・それに？」
「早く帰って、ドンへとセックスしたい」
「・・・っ」
全く、最後の最後でロマンチックをぶち壊すんだから！！って思ったけれど、正直に言うと、俺も早くヒョクとしたくなっちゃったから、右手をグーにして、ちょんとヒョクの肩をコツンと叩くと、小さい声でバカ。と、呟く。
帰りの車内は、変に緊張しちゃって、別の意味でお互い話す事が出来なかった。
MerryChristmas!!
