「・・・たいくつ!!」

 退屈なわけない、本当は曲も作らなきゃいけない。アレもコレもやらなきゃいけないことはたくさんある。でも、手につかない。

 それはきっと、彼のぬくもりが足りないからだ。

「俺って、こんなに弱かったっけ・・・?」

 ちょっと前だったら、数日離れるくらいなんてことなかったのに。むしろ、一緒に居すぎて少しくらい離れてもいいんじゃない?くらい思っていたのに。彼のぬくもりが肌から薄れていって、何処にいてもヒョクの香りがしなくなってから急に不安が襲ってくるようになったんだ。

 このまま、もしヒョクが帰って来なかったらどうしよう。

 デスク脇に置いてあるカレンダーには、ヒョクが仕事で家を離れる日と帰ってくる日に赤ペンで大きくマルが書かれている。待ちきれなくて、帰ってくる日が見えないくらいペンでぐしゃぐしゃにしちゃったよ。

 本当だったら、ワクワクしながら待っていたかったのにな。

 ベッドで枕に顔をうずめて、不安な思いをかき消したくて目を閉じる。あと何日、こういう思いをしたらいいのかなって思いながら、いろいろな事を考えていると睡魔なんてどこかにいっちゃって。

 今日もなかなか眠りにつけないかも・・・って小さい声でつぶやいたときに、スマホが大きな音をたてた。
 着信音が部屋中に鳴り響いて、静かだった部屋が一気に騒がしくなる。スマホを見るとヒョクのことを考えちゃうから、わざと手に届かないようなところに置いておいたのが間違いだった。

 慌てて飛び起きて、デスクの奥のほうに追いやっていたスマホにしがみつく。電話が切れたらどうしようって思ったら、半ば無意識に画面を勢いよくスライドしてしまった。

「あ・・・っ、はい!!」

「わっ・・・・・・ドンヘ?もしかして、寝てた?」

 受話器越しからも、ドンヘが慌てて電話に出た様子が伝わったようで、ヒョクがごめんって直ぐに謝る。

「・・・・・・だ、大丈夫・・起きてたよ」

 やばいヒョクだ、ヒョクの声だ。聞き慣れているはずなのに、ものすごく久しぶりすぎて、まるで初めて好きな人と電話をしているかのような気持ちになる。どうしよう、言葉があとに続かないよ。

「・・・・・・」

「ヒョク・・・?」

 お互いの間に流れるたった数秒程度の沈黙。でも、彼の声が1秒でも聞こえないのが苦しくて、不安になってつい名前を呼んでしまった。そこからさらに数秒経ったあと、ヒョクが大きな声でドンヘ!!って俺の名前を叫んでくれたから、思わず顔がほころんでしまった。

「あぁ、もう!!すっげぇ声聞きたかった!!ドンヘ全然俺に連絡してくれないんだもん」

「だ、だって・・・」

「・・・わかってる。どうせ、俺の仕事の邪魔になるからとか言ってさ、変に気を遣ってたんだろ」

「う・・・・・・だって、忙しくなるって言ってたじゃん」

「言ったけど、どれだけ忙しくてもドンヘの電話だったら絶対に出るぜ?なんかもう悔しくなってさ、数日間連絡取らなかったら、ドンヘから電話くれるかなって・・・少し意地張っちゃったよ」

 少しトーンが下がるヒョクの声を聞いて、ドンヘの心がぎゅうっと締め付けられた。どれだけ忙しくても、ヒョクはこの数日間俺からの電話をどんな気持ちで待っていたんだろう。

 寂しいなら、うだうだ考えずに電話すれば良かったんだ。

「・・・・・・ごめん、怒ってる?」

「なんで?怒ってないよ、俺はそういう馬鹿みたいに気遣うドンヘが大好きなんだから」

「ヒョク・・・」

「でもさ、たった数日なのに、声が聞けないだけで気が狂いそうだったよ・・・」

「・・・おれ、も・・・俺もだよ・・・」

 ヒョクがドンヘって囁くと、耳から身体中にピリピリと電流が走るような甘い刺激に襲われる。

 受話器越しに聞こえてくる彼の唇の動き。どんなに小さな動作でも一つ漏らさず音にして耳に入ってくるから、いつも以上に敏感に反応してしまう。ヒョクがスマホの画面にゆっくりと唇をあてると、その音がまるでキスをしているようで、馬鹿みたいにヒョクのことを想像しちゃうよ。

「ん・・・ヒョク・・・」

「会えるまで我慢できない・・・ねぇ、このまましよっか」

「こ、このまま・・・って」

「電話でセックス、なんだかんだ言っても初めてだよね」

 スマホから響く、少し低いトーンで話すヒョクの声。目の前に居ないのに、彼に押し倒されているような気持ちになる。電話でってことは、つまり自分でする訳だけど、部屋に誰もいないのはわかっていてもヒョクに見られているような、何時もとは違う緊張感に身体が震えちゃうよ。

「じゃあ・・・ゆっくりシャツをめくってさ、自分で胸をいじってみてよ」

「う・・・うんっ・・・・・・あっ・・・あ・・」

 不思議だ。まるでヒョクに操られてしまったかのように、素直に指示に従ってゆっくりとシャツをめくっている自分がいる。目を閉じて丁寧に指を舐めて、自分の唾液で湿らせてから胸を触ると、まるでヒョクに乳首を舐められているような気持ちになって甘い声が溢れる。

「・・・エロ・・・・・・ねぇ、胸だけなのに、そんな声出ちゃうの?」

「う、あ・・・だ、って・・・っ」

 はあっ、ってヒョクの息遣いが耳から脳に響く。身体中が甘い刺激に襲われて、胸だけなのにもうイッちゃいそうだ。

「ひょくぅ・・・だめ、もう・・・触りたいよぉっ・・・」

「・・・あ、そうだ、俺が前にあげたバイブある?あれ使ってさ、自分で挿れながら扱いてみてよ」

 バイブは、たまにはいつもと違うセックスもしたいよね。って、ヒョクに言われて、数回だけ使ったことがある。身体がおかしくなるくらい気持ちよくなって、イヤじゃないけれど正直に言えばちょっと怖い。

 だから、ヒョクの口からバイブって言われると、いつもならちょっと抵抗を感じるんだけど。

「あ、ある・・・っ」

 でも今日はバイブを挿れて、ヒョクにぐちゃぐちゃに犯されたいって思ってしまった。

 

 

 

 

 

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