Fall in Love_001・Opening

会いたい。

会えない。

会いたいって言えない。

別れたいって言えたら、どれだけ幸せだろうか。

「・・・また、アイツのこと考えてるの?」

「何のことです?」

 お気に入りのカフェでランチをしていると、同僚のチャンミンが突然後ろから話しかけてきた。入るときに一通り周囲を確認したから、この男が居ないことはチェック済だったはずなのに。
 キュヒョンはわざと見せつけるように舌打ちをすると、彼はニッコリと笑顔を見せて、誰の許可も得ていないのに俺の前に当たり前のように座ってきた。

「・・・座っていいなんて一言も言ってないですけど」

「え?今、前空いてますよって合図してくれたよね?」

 これまでいろいろな人と出会ってきたけれど、ここまでキュヒョンの毒をさらりとかわす人なんていなかった。

「プラス思考にも程がありますよ」

 キュヒョンが口元を押さえながら、少し笑顔を見せるとチャンミンも安堵の笑みを浮かべる。
 別に2人は仲が悪いわけではない。むしろ、キュヒョンはチャンミンのことを気に入っているし、友人だと思っている。だからこそ、彼にだけはこれ以上俺の惨めな姿を見せたくなんて無かった。

「まだ別れてないの」

「・・・」

「妻帯者なんて、絶対に幸せになんてなれない。俺は・・・」

 そんなことは、自分が一番わかっている。当たり前のことを言われるのが一番胸に突き刺さるし、何も言い返すことができない。
 キュヒョンはスマートフォンをテーブルの上に置き、何も言わずに、ただじっとチャンミンの顔を見つめた。

 もう、これ以上言わないでください。

「・・・っ、ごめん」

「いえ・・・」

 チャンミンとは、もっと別の話で明るく盛り上がりたいのに。ここ最近こんな感じで、お互い気まずくなるばかりだ。
 いや、何を言っているのだろう。悪いのはすべて俺なのに。

・・・別れたいって言えないから、いけないんだ。

 

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