会いたい。
会えない。
会いたいって言えない。
別れたいって言えたら、どれだけ幸せだろうか。
「・・・また、アイツのこと考えてるの?」
「何のことです?」
お気に入りのカフェでランチをしていると、同僚のチャンミンが突然後ろから話しかけてきた。入るときに一通り周囲を確認したから、この男が居ないことはチェック済だったはずなのに。
キュヒョンはわざと見せつけるように舌打ちをすると、彼はニッコリと笑顔を見せて、誰の許可も得ていないのに俺の前に当たり前のように座ってきた。
「・・・座っていいなんて一言も言ってないですけど」
「え?今、前空いてますよって合図してくれたよね?」
これまでいろいろな人と出会ってきたけれど、ここまでキュヒョンの毒をさらりとかわす人なんていなかった。
「プラス思考にも程がありますよ」
キュヒョンが口元を押さえながら、少し笑顔を見せるとチャンミンも安堵の笑みを浮かべる。
別に2人は仲が悪いわけではない。むしろ、キュヒョンはチャンミンのことを気に入っているし、友人だと思っている。だからこそ、彼にだけはこれ以上俺の惨めな姿を見せたくなんて無かった。
「まだ別れてないの」
「・・・」
「妻帯者なんて、絶対に幸せになんてなれない。俺は・・・」
そんなことは、自分が一番わかっている。当たり前のことを言われるのが一番胸に突き刺さるし、何も言い返すことができない。
キュヒョンはスマートフォンをテーブルの上に置き、何も言わずに、ただじっとチャンミンの顔を見つめた。
もう、これ以上言わないでください。
「・・・っ、ごめん」
「いえ・・・」
チャンミンとは、もっと別の話で明るく盛り上がりたいのに。ここ最近こんな感じで、お互い気まずくなるばかりだ。
いや、何を言っているのだろう。悪いのはすべて俺なのに。
・・・別れたいって言えないから、いけないんだ。
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