「うぅ・・・」
「まったく、39度も熱があるのにどれだけはしゃいでるんだよ!」
正確に言えばダンスの練習をしていただけであって、決してドンヘはバカみたいにはしゃいではいない。
まぁ、休憩中に休まないで変な動きをしたり、先生の難しいステップに挑戦してみたりしていたけれど。
最後の振り付けを教えてもらい、じゃあ少し練習していけそうだったら通してみようってなった時に、ドンヘが顔を真っ赤にしてその場でうずくまってしまった。
ヒョクが慌てて近づいて、そっとドンヘのおでこに手を当てると「あっつ!!」って思わず叫んでしまう。
体温計なんて使わなくても、間違いなく熱があることが解って、そのままホテルに連れ戻された。
「だって・・・ぇ・・・」
小さい声で、ものすごく親に怒られた子どものように、しゅんとした態度を見せるドンヘ。
昔からいつもそうだ。自分のことを犠牲にして、ギリギリまで周りに迷惑をかけないように我慢する。
でも、それは時として、パートナーである俺の心を酷く締め付ける。
しっかりと俺が周り(ドンヘ)を見ていたら、もっと上手にスケジュール組めたのにって。後悔の念に駆られるんだ。
「・・・悪い、俺がちゃんとお前のこと見てなかったから」
「違うよ・・・俺がちゃんと自分の管理できなかっただけだよ」
「違うって!!」
「違うもん!!」
意地っ張りって勢いのまま言おうとしたけれど、これ以上関係ないところで彼の熱を上げても仕方ない。
ドンヘの顔を見ると説教したくなるから、小さなため息をつくとそのまま背を向けて冷蔵庫に向かった。
「ひょく・・・ごめん、ありがと・・・」
「ん・・・」
意地っ張りだけど、少しでも自分に非があるってわかったら直ぐに謝ってくる。そういう素直なところがドンヘの魅力だ。
熱があって、相手のことなんて気遣う余裕なんてないくせに。
「ばか・・・謝るのは、俺のほうだろ」
冷蔵庫から冷たいスポーツドリンクを2本取り出すと、1本キャップを外してドンヘに渡した。
起き上がるのもやっとそうだけれど、水分はしっかりと取らなくてはいけないことは本人もわかっているようだ。
「あっ・・・」
熱のせいでペットボトルを傾ける程度がわからなかったのか、予想以上にスポーツドリンクが出て、口から溢れてしまった。
唇から垂れる液体がなんだかエロくてそそる。病人に対して、こんなことしたら絶対にいけないのは解っているんだけれど・・・。
「ん・・・・・・ぅ・・・」
ドンヘの肩にやさしく手を置いて、唇を近づけてペロリとドリンクを舐めると、かわいらしくドンヘが反応するから、余計にそそられてしまった。
「バカ・・・煽るなって」
「煽ってなんか・・・ふぅ・・・っ」
唇の端を舐めるだけでは物足りなくて、そのまま唇にキスをする。
漏れる吐息が熱い。かなり判断力が落ちているのか、普段のドンヘだったら絶対に自分が体調悪かったら力の限り俺を拒否するはずなのに。
そんな余裕もなくて、ただヒョクから与えられる気持ちよさに身体が逆らえずにいるみたいだ。
「あ、らめ・・・ひょくぅ・・・っ・・・」
「ドンヘ・・・」
唇だけじゃ物足りなくて、いますぐにでも押し倒してドンヘのことをめちゃくちゃにしたい。でも、流石にそこまではやり過ぎだってことは俺だってわかっている。
「・・・元気になったら、めちゃくちゃにしてやるからな」
「う・・ん・・・・・・」
かっこよく決めているセットを崩すぐらい、くしゃくしゃに頭を撫でて精一杯の笑顔を見せると、ドンヘも意味が解っているのかニッコリと笑顔を見せてくれた。
ああ、これは熱で覚えてないだろうなって思ったけれど、同意は得たからな。
それからしばらくの時間、ヒョクはドンヘの隣に付きっ切りで他愛のない話をして盛り上がった。しばらくすると、薬が効いてきたのか心地よい寝息が聞こえてくる。
よかった、しっかりと寝て、これで明日にでも治ってくれたら・・・・・・
「・・・練習再開できるって思ったのに」
「今度は俺がヒョクの看病するからね!!何してほしい?」
「俺に近寄んな!!」
見事にウツサレタ。
終。