「ひょーくぅ!」
日付も変わろうとしているというのに、バカデカい声で後ろから話し掛けてくるのはウチのメンバーきってのアホの子だ。これだけ有名になっても、お前、有名人だっていう自覚あるよね?って聞いてやりたくなるような行動を多々してくれるもんだから、毎回冷や汗ものだ。
まぁ、何時もの事だから、これくらい気にならないけどさ。でも、あまり騒ぐと、ご近所迷惑になるし、何よりも上のお兄ちゃん達から、きちんと躾をしろ!って怒られてしまうのが一番面倒なんだよね。
「・・・夜中」
「・・・っ!」
ヒョクは小さい声で、右手人差し指を真っ直ぐに立てた状態で、唇の前に持ってくる。すると、状況をようやく把握したのか、ドンヘが両手で慌てて口元を抑えた。その行為が小学生みたいで、とても二十歳を過ぎた成人男性には見えず、アホっぽくて本当に可愛いなんて思ってしまうなんて、俺も相当おかしいのだろうか。
§
「で、何?」
「え?何って?」
「・・・あんな時間に、俺の名前をデカい声で呼んだ理由」
「だって、今日はお互い違う仕事だったのに、帰る時間が一緒だったんだもん!嬉しくって!」
瞳をキラキラとさせながら、まるで運命のようだと話すドンヘを見ていたら、一気に今日一日分の疲れが出てしまい、そのままベットに倒れ込んでしまった。まぁ、そんな事だろうとは思ったけれど、じゃあ別に、あんなデカい声で話し掛けなくても良いんじゃないの?って素直に思う。
「ヒョク、寝るの?」
「お前のせいで疲れたから寝る・・・ほら、早く出てけ」
「う・・・」
ワザと背を向けて、早く出ていけというオーラを出す。明日も早いから、取り敢えず寝て、シャワーは朝浴びる事にしよう。ヒョクは、明日の予定をぼんやりと考えながら、ゆっくりと目を閉じる。すると、ドンヘがベッドの中に入り込んで来て、腰に手を回して、思い切り抱き着いてきた。
「・・・っ、ドンヘ?」
「ヒョク・・・寂しいよぅ」
背中越しに、そんなセリフを小さい声で囁かれるなんて、思っても居なかった。とんでもない不意打ちに、慌てて振り返ると、ドンヘは俺の名前を小さい声で呟きながら、寝ていた。
「はぁ?」
いや、ここはどう考えても、展開的には抱き締めあって、ごめんって謝りながらキスをして、服を脱がしあって色々とあるんじゃないのか?なんで俺の部屋で、俺よりも早く寝てんの?
よく解らないイライラが溜まってきて、そのまま蹴り落としてやろうかと思ったんだけれど、ヒョクって呟きながら、涙を零すドンヘを見ていたら、本当に寂しかったんだろうなって思った。俺の姿を久し振りに見かけて、嬉しくて大声で呼ぶとか、どれだけ犬なんだよ。
「・・・バカ」
ドンヘの唇に、そっとキスをする。そして、明日のドンヘの予定を後でマネージャーに確認しようって思いながら、そっと瞼を閉じる。
明日は、サプライズで俺がドンヘを脅かしてやろうと思ったから。

 

END