兄さんは可愛い

キュヒョン×イェソン

 

ふと空を見上げると、今日は満月だった。

いつもより練習に力が入ってしまって、気が付けば日付も変わって深夜2時。イェソンヒョンと2人で歌う曲なんて珍しいから、ヒョンにやっぱキュヒョンじゃなくてリョウクが良かった。何て事は、絶対に言われないように頑張らないといけない!なんて気合いを入れすぎてしまった。
しかも明らかに気合いの入り方が違ったから、ヒョクとかに色々とからかわれて恥ずかしい思いをしてしまったんだけれど、もうこうなったらヤケだ!!って感じで、こんな時間まで練習をしてしまった。変に気分が高揚してしまったキュヒョンは、このまま家に戻らないで寄り道をしてしまおうかと思って、ふと近くの公園に入ったら、イェソンが居て驚いてしまった。

「・・・・ヒョン?」

「キュヒョン?!」

漫画の様に何してる、までお互いにハモってしまって、恥ずかしいと思ったのか、イェソンはそのまま頬を赤らめながら、黙りこんでしまった。キュヒョンも確かに恥ずかしかったけれど、それ以上にこんな時間に、ヒョンが公園で何をしてるんだろうと思ったら、やっぱし何してるんですか?って聞かずには居られなくて。

「い、いや・・・・それより、こんな時間まで練習していたのか?」

「え、あ・・・・・・はい」

「・・・・・・」

ヒョンはきっと、俺が「何故」練習していたのかという理由には気付いていないだろうけれど、とりあえず俺が、ずっと練習していた事には気付いていたみたいだ。ヒョンに真っ直ぐ瞳を見つめられて、恥ずかしくなってしまったキュヒョンは、珍しく良い言い訳も思い浮かばないまま、はい。とだけ答えると、イェソンもそれ以上は何も聞かず、お互い黙り込んでしまった。

もしかしたら、怒られるかもしれない。

人一倍、年下には優しいヒョンだから、こんな時間になっても帰ってこない俺を心配してくれたのかも。練習するのはいいけど、今何時だと思ってるんだ?そんな事を聞かれたら、俺は益々何も答えることが出来ないじゃないか。あれ、でも、だとしたら、何故ヒョンは公園に居るのだろうか。ヒョンじゃなくても、何時まで経っても帰ってこない俺を心配するのなら、直接スタジオに顔を出したほうが探す手間も省けて良いはずなのに。

「・・・・・・帰るか」

悶々としながら、キュヒョンが考えをまとめていると、ヒョンに不意に手を掴まれて、キュヒョンは驚いてしまった。優しく掴んでくれた手がとても暖かくて、握り返して良いのかと思うとドキドキしてしまう。

「あ、あの・・・・ヒョンこそ、こんな時間に公園で何をしてたんですか?」

「・・・・」

キュヒョンが照れ隠しの為に、イェソンに思い切って尋ねると、掴んでいた手がピクリと反応した。聞かれたくなかったのかな、と思ってそっとイェソンの顔色を窺うと、何故かヒョンの顔は真っ赤になっていて、キュヒョンは驚いてしまった。

「ヒョン・・・・?」

「・・・・・・キュヒョンが、俺たちの曲を一生懸命練習してたから」

「え?」

「だから、俺も練習しないといけないって思っただけだ!!」

つまり、要約すると練習の為に公園に今まで居たということなのだろうか?キュヒョンがまた、頭の中で考えをまとめていると、黙ってしまった俺を見て慌ててしまったのか、イェソンが続け様に、決してキュヒョンの事が気になったとかそういうアレじゃないとか、ものすごく可愛いことを叫ぶもんだから、キュヒョンは思わず笑顔になってしまった。つまり、俺の事が気になったから、どうしたら良いのか解らずに公園に居たっていう事で。

「・・・・ヒョン」

「え?・・・・・・わっ!!」

掴んでいた手を、ぐっと引き寄せてキュヒョンは思い切ってイェソンにキスをする。突然キスをされてしまったイェソンは、それはもう慌ててしまって、顔なんか暗くて良く見えないけれど、間違いなくさっき以上に真っ赤になってしまっているんだろうなって思うと、キュヒョンはこれ以上無いくらい、愛しくて愛しくて仕方なくなってしまって。

「・・・・心配かけて、ごめんなさい」

本当は、もっとヒョンにキスをしたいし、抱きしめたい衝動に駆られていたんだけれど、これ以上ヒョンに触れたら、抑えが利かなくなっちゃうから、可愛い弟は、素直にヒョンに謝って、代わりに掴んでいた手に力を込める。

「・・・・・・は、早く帰るぞ!!」

キュヒョンはそっと、小さい声で、好きですって呟いた。聞こえていたかどうかは解らないけれど、イェソンの手が俺の手を強く握り返してくれただけでキュヒョンの心は満足だ。ヒョンのくせに、こんなにも可愛くて素敵な人。やっぱり今日は、寄り道をして正解だったとキュヒョンは思う。
それにしても、公園で歌の練習だなんて、自分の立場を解っているのだろうかとか思っていたら、翌日、インターネットですごいヒョンの事が書かれていて、事務所から大目玉をくらっていた。そんなヒョンを見て、やっぱしこの人は天然だよなとは思うんだけれど、それでも、今回の件は俺のせいだって思うと、キュヒョンは嫌味も言えず、笑顔になるしかないんだ。

 

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※弟想いの可愛い兄さん、翻弄される可愛い兄さんが書きたかった。

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