キュヒョン×ソンミン

 

「ふぁ・・・・・・」

キュヒョンの馬鹿みたいにだらしない声が、楽屋中に響き渡って、しんと静まり返る。他のメンバーは撮影で出ているけれど、俺の出番はもう少し後だという事で、ちょっと抜け出してきたんだから当然だ。実は、ここまで眠いのには理由があった。今日が撮影だと解っていても、チャンミンにものすごくレアなワインが手に入ったって言われたら、行かない訳にはいかない。お陰で午前様になってしまい、特にソンミンに怒られるのが怖くて、こっそり宿舎に戻ってきたんだ。幸い、誰にもバレずに済んだけれど、強烈な眠気には勝てず、フラフラとしていたら、ドンヘに見つかって、眠いのなら楽屋で寝てたら?って言われたんだ。まぁ、お言葉に甘えて今、こうしている訳なんだけれど。
3人掛けのソファにドカッと座って、天井を眺めると、不思議な事に自然と瞼が落ちてくる。携帯電話でアラームもきちんと準備したし、万が一寝過ごしてしまったとしても、ドンヘが覗きに来てくれるだろう。なんて、他力本願だけれど、もう眠くて仕方なくて、これ以上まともに何かを考える事なんて出来なかった。キュヒョンは吸い込まれるようにして瞼を閉じると、深い眠りに入っていく。

・・・・・・筈だった

 

「キュヒョン・・・・・・あ、いた!!」

 

ドアが開いた瞬間、何だかフローラルな香りが部屋全体に広がる気がした。いた、気がしたというのは、実際にソンミンはそんな香水なんてつけていないからだ。なんというか、彼の存在自体がフローラルというか、妖精じみているというか、まぁ、俺にとってのイメージがそうなんだから仕方ない。普段であれば、恋人である俺に、仕事中に必要以上に絡んでくることなんて絶対にないのだが、今日は一体どうしたんだろう、わざわざ俺を探しに来てまで何か言いたい事でもあるのだろうか。

・・・・・・と、冷静に分析はするのだが、正直言って眠気には勝てないので、ソンミンがせっかく話しかけてくれているのにも関わらず、キュヒョンは何も返すことをしないで、無視をしてしまった。

ソンミンはキュヒョンに何度か話し掛けるのだが、何も反応を示さないで、しかも3人掛けのソファを遠慮なく使って寝ている姿を見て、少し落ち込んでしまった。そして、誰も見ていないけれど、その可愛い表情で、頬に空気を溜めて、解りやすく「怒っている」表現をしてみせると、何時もなら諦めて直ぐに帰る所を、今回はなんと粘って、傍によってキュヒョンの身体をゆすり始めたんだ。キュヒョンも俺が寝たふりをすれば、諦めて帰るだろうと思っていたので、まさか傍に寄ってきて、身体をゆすられるとは思ってもいなかったから、驚きを隠せなかった。しかし、一度寝たふりを決めてしまった以上、ここで変に起きてしまっては、場の空気が悪くなる。だから、どれだけ身体をゆすられても、一度無視を決めたのであれば、キュヒョンもそれを最後まで貫き通してやろうと、頑なになってしまった。

「・・・・・・朝方に帰ってくるからだよ、バカ!」

「!!」

いくら揺すっても起きないキュヒョンの姿を見て、最後にソンミンがそう言い放つと、頬に優しくキスをする。キュヒョンは、不意打ちでキスをされてしまった事にも驚いてしまったが、それ以上に、俺が今朝まで何処かに出かけていて、朝方にこっそり宿舎に戻ってきていたという事に気付いていたんだという事を知って、驚きが隠せなかった。

「・・・・・・わ・・・・ひゃあ!!」

「バカで悪かったですねって・・・・・・な、何ですか、ソレ!!」

だったらもう、俺が眠いのは百も承知の筈なのに、何で起こしに来たんだと思うと、ちょっとだけ怒りが込みあげてきてしまう。キュヒョンがパッと目を開いて、ソンミンの腕を掴んで思い切り引き寄せると、そのまま唇を重ねて、深くキスをする。すると、耳元で可愛い声をあげるもんだから、思わず無意識のうちに、何時もの小悪魔な笑顔を浮かべてしまった。しかし、何となくソンミンの様子がおかしい気がして、しっかりと目を見開くと、なんとソンミンが薄いピンク色の可愛いメイド服を着ているではないか。
キュヒョンは見事に、一気に眠気が吹っ飛んでしまい、ソンミンのお蔭で助かったと言えば助かったんだけれど、ソンミンの格好を見て、嫌な予感が脳裏をよぎる。

「やっぱり、説明聞いてなかったでしょ!今日の撮影って、女装もあるんだよ」

「はぁ、そうなんです・・・・・・ね」

「へへ、どう?なかなか可愛いでしょ?」

そう言いながら、クルクルと回って俺の前で溢れんばかりの笑顔を見せるソンミンは、確かに下手な女の子よりも可愛いとは思う。でも、そんなにクルクルと回ったら、スカートが遠心力でめくれあがってしまうという事に、本人は気付いているのだろうか。やはりそこらへんの適当さは男だというか、何とも言えない無防備さはたまらないと思う。キュヒョンの想像通り、思った以上に勢いよくクルクルとソンミンが回るもんだから、ただでさえ少し短めのスカートなのに、見事にめくれあがってしまい、スカートの中がちらりと見えてしまった。

「ち、ちょっと待った!!」

「ひぁ?!あ、やっ、何っ?」

「何、はこっちのセリフでしょ!!これ、女性の下着ですよね?」

どうせ見えても、トランクスだかボクサーブリーフだか、まぁソンミンの下着なら何も感じる事は無いだろうと思っていたのだが、なんとめくれあがってスカートの中から覗かせたのは、可愛らしいピンクの、間違いなく女性の下着で、思わずキュヒョンはソンミンを掴んで、そのままソファに押し倒して、思い切りめくって確認をしてしまった。ソンミンも、まさかキュヒョンに見られるとは思ってもいなかったらしく、慌てて顔を真っ赤にすると、小さい声で監督さんに履いてくれって頼まれた事を白状するんだ。

「は?!・・・・・・それも、全員強制ですか?!」

「ドンヘと俺はみんなに無理やり履かされて、ヒチョル兄さんは自分から・・・・・・まぁ、それは流石に任意かなぁ」

「・・・・・・確かに、ヒチョル兄さんは、監督に言われなくても勝手にTバックとか履きそうですね」

なんてジョークを、ソンミンの前で言う余裕はあったとしても、内心は絶対に履きたくないという気持ちでいっぱいだったキュヒョンは、大きなため息を吐き出す。そして、一気にこの後の撮影が憂鬱になって仕方ない気持ちになる。ふと、目の前を見ると、自分で押し倒したにも関わらず、ソンミンがとても誘っている様な、可愛らしい格好でソファに倒れ込んでいる。スカートが少しめくれあがって、今にも見えそうな下着が、変にキュヒョンの悪戯心をくすぐってしまい、仕事中であるにも関わらず、キュヒョンは変な気持ちになってしまった。そっと人差し指をソンミンのふとももに這わすと、ソンミンが小さい声でピクリと反応をする。そして、キュヒョンの先の行動を理解したソンミンが、解りやすく両手でスカートを抑えるから、それがまた何とも言えずに可愛くて、キュヒョンを興奮させるんだ。

「あ、や・・・・待って・・・・・・だって、今、撮影中だよ?そういうのはおうちに帰ってから、ね?」

「・・・・・・誘ってきたのは、ソンミンですよ?それに、宿舎に帰ったらメイドじゃなくなるし」

「違うって、誘ってない・・・・・・んっ・・・・・・」

ゆっくりと焦らすようにしながら、指をスカートの中に入れる。やわらかい手触りの下着に触れて、上からそっと下半身を撫でると、ソンミンがものすごく我慢しているのか、声を出さない代わりに身体をうねらせて、ビクビクと反応する。顔を真っ赤にして、やめてっていう姿も、俺の事を誘っているとしか思えない。しかも、こんなに可愛いメイド服を着て、何だかソンミンが本物の女の子になったようで、キュヒョンはもう歯止めが聞かなかった。

 

「や、だから、ダメだってば!!」

 

ソンミンが思い切り両手を押して、キュヒョンを弾き飛ばす。キュヒョンもまさかそんな事をされるとは思ってもいなかったから、油断をしてしまい、放物線を描くように華麗に飛んでしまった。その瞬間、ソファから落ちてしまったキュヒョンは、落ち所が悪くて顔を強打する。もう、それだけの事をされたら、眠気もヤル気も失せちゃって、一言ゴメンって謝るしかない。むしろ、派手にこけて大きな音を出してしまったから、誰かが飛んで来ないかというほうが心配だ。

「メ、メイド服を見せたら、キュヒョンも目が覚めるかなって思っただけで・・・・・・そ、それだけなんだから!!」

そしてソンミンも、誰かが来るといけないと察したらしく、慌てて逃げるようにして控室を後にする。何だか後に取り残されてしまった俺は、ものすごく空しさだけが残って仕方なかった。

「キュヒョン!なんかすごい音がしたけど、大丈夫?」

「ドンヘ・・・・・・」

案の定、控室から聞こえてきた物音を聞いて、直ぐにドンヘが駆けつけてきた。キュヒョンは笑顔で、ちょっと寝ていたら落ちちゃったんですけど、大丈夫ですよ。って言うと、ドンヘの顔が真っ青になる。そして、もうすぐ撮影だけど、ヤバいかもよ?って言うんだけど、俺には何がヤバいのか全く理解できなかった。

「キュヒョン・・・・・・流石にその顔じゃあ撮影は出来ないよ」

自分の出番になって、撮影現場に戻ってみたら、みんなが一斉に俺の顔を見る。そこで初めてキュヒョンは自分の顔を鏡で見て、絶句してしまった。ベットから落ちた時に顔を強打したのは良いのだけれど、見事に痣が出来ていて、とても撮影なんて出来る状態じゃなかった。確かにこれは、修正出来るレベルではないなと思うと、全員にごめんなさいって頭を下げるしかなかった。ふとソンミンと目が合うと、申し訳なさそうな表情で、今にも泣きそうだ。ここで泣いてしまったら意味が無いだろうと思うと、アイコンタクトをして大丈夫ですよ。って安心させるんだけど、アイコンタクトをした瞬間、顔にものすごく、ひきつるような痛みを感じて、かなり深い傷なんだという事を自覚すると、益々激しい痛みがキュヒョンを襲ってきた。

「バカ、昨日飲みすぎて朝帰りなんてするからだよ!!」

ヒチョルに笑われながら大声でそう叫ばれて、スタジオは一気に大爆笑のムードになる。嫌なムードを断ち切ってくれたヒチョル兄さんの気転には感謝するんだけれど、みんな気付いていたんだって思うと、恥ずかしさのあまり何も言い返せなかった。そしてもう、撮影前日にはチャンミンに何を言われて誘われても、絶対にお酒を飲みになんて行かないぞと、心から誓うのであった。

 

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※メイド三昧‥‥‥あとは誰をメイドにすれば良い?笑