Smoker-02

「・・・・・・あれ?」

 イトゥクが目を覚ますと、あまりの天井の真っ白さに少しばかり目がかすむ。意識が酷くぼんやりとして、このまま目を閉じたらずっと眠り続けるんじゃないだろうかって思える程のけだるさがイトゥクを襲う。
 俺は一体何時間眠っていたのだろう。此処は何処なのだろうかとか、色々と考えることはある筈なのに、上手く頭が回らなくてもどかしい。
 とりあえず起きようと思って、右手を動かそうとした瞬間、腕が引きつって違和感を感じた。慌てて自分の右腕を見ると、なんと点滴の針が刺さっているではないか。動かした瞬間に針が少しずれたようで、じんわりと痛みを感じる。まぁ、生きているっていう証なのだろうか。

「トゥギ兄さん!!」

「あ、ドンヘ・・・」
「う・・・よかったぁぁぁ」
 点滴の針やベッドに掛かっているナースコールを見て、どこかの病院の一室なのだろうという事は解った。さっそく看護師さんを呼ぼうと思って、空いている左手を伸ばした瞬間、良いタイミングでドンヘが病室に入ってきたので、イトゥクは安堵のため息をついた。
 でも、俺は何故病院に居るのだろうか。何処が悪いのだろうか。記憶が無いってことは意識を失った?とにかく色々と話を聞きたいのだけれど、目の前のドンヘは俺が目を覚ましたのが相当嬉しかったのだろう、ボロボロとメイクが崩れるくらい涙をこぼしていた。
 え?もしかして数年眠ってましたとかじゃないよね?うん、たぶん大丈夫な筈だ、目の前に居るドンヘは、俺が知ってるドンヘの顔だし、歳とって老けてるような印象はない・・・と、思う。
 泣き崩れたドンヘを冷静になだめて、イトゥクが詳細を聞けたのは、それから10分もした後だった。

「丸1日寝ていたとか・・・どうしよう、俺仕事・・・!!」

「仕事は、代わりにヒチョル兄さんとシンドン兄さんが調整してくれたよ」
 ドンヘが俺に心配をかけまいとして、ヒチョルとシンドンがフォローを入れてくれている事を話してくれるんだけれど、かえって申し訳ない気持ちになる。っていうか、仕事をしていないと不安しか無い。早く退院して、明日からでも働きたい。

「ダメだ、我慢できない!!ねぇ、今すぐ退院出来ないの?」

「無理ですよ」
「看護師さんの言う通りだよ、今すぐなんて無茶言わないでよ」
「イトゥクさんは、仕事のし過ぎで倒れたんですよ?ヒチョルさんとシンドンさんからも、絶対に病室で仕事させないようにって言われてるんです。因みに、病室内は携帯・パソコン禁止ですからね」
「そんな事言わないで下さい。せめて電話だけでも」

「ダメに決まってんだろ」

「ヒチョル!」
 まるでドラマのワンシーンかという位のタイミングの良さで、ヒチョルが病室に入ってくる。もしかしたら、ドンヘと一緒に来ていたのかもしれない。
 イトゥクが笑顔で(心の中では睨みつけて)ドンヘを見つめると、サッと解りやすくドンヘが視線をそらして、ヒチョルの後ろに隠れる。まるで小さい子どものようだ。まぁ、ヒチョルの腕ごしから小さい声で、ごめんなさいって素直に謝ったから許してあげるけれど。
「とりあえず、しばらくは仕事禁止。っていうか、もうメンバー内でお前の抱えている仕事は調整してるから、直ぐに退院しても今月お前に仕事は無い」
「そんな、仕事無いって・・・!!」

「いいから・・・しばらくゆっくり休んでろ」

 そう言って俺を見つめるヒチョルの顔は、恐ろしいくらいのビジネススマイルで、イトゥクは背筋がぞくりとする。嗚呼、もうこれは絶対に従わないといけないヤツだ。

「おい、解りました・・・は?」

「・・・わかり、ました」

 本当は解りたくないけれど、そういうしか無かった。だって、ヒチョルの笑顔の裏からは、溢れ出る程の怒りを感じたのだから。

 

 

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