Smoker-03

「あんな風に、すごく怒りをあらわにしたヒチョルを見たの、何年振りだろ」

 ヒチョルは、俺にしっかりと「解りました」と言わせたあと、嫌味っぽくイトゥクの仕事に行ってくると言って、早々に病室を後にしてしまった。俺たちのやりとりを見て、少し不安そうに見ていた看護師さんも、ヒチョルが去って行くのを見届けた後、安堵した表情を見せて、普通に仕事に戻っていく。
 あっという間に、また俺とドンヘの2人きりになってしまったので、普段は絶対にメンバーにこぼさない様な言葉が溢れてしまった。

「え?」

 病室の窓から、キレイな景色!!とか子どもみたいにはしゃいでいたドンヘが、イトゥクの言葉に敏感に反応して振り返る。その行動が犬っぽくて、笑ったらいけないんだろうけれど、声を出さないようにしたら、変なにやけ顔になってしまった。
 っていうか、独り言のつもりだったから、そこまで過度に反応されちゃうと、逆にどう答えていいのか悩んでしまうじゃないか。

「あ・・・いや、今回の入院騒ぎでさ、お前、何年この仕事やってんの?って、ヒチョルに呆れられちゃったなって」

 その言葉に、特別に深い意味は無かった。言ってしまえば、独り言の延長のようなものだ。だから、ドンヘからはそうだね。兄さん働きすぎだよ!みたいなリアクションを求めていたのだけれど。
 明るかったドンヘの顔が、一瞬にして崩れて切ない顔に変わるから、予想していなかったイトゥクが驚きの表情を見せる。

「・・・トゥギ兄さん!!」

「・・・ドンヘ?」
「なに言ってるの?兄さんが倒れた時・・・一番心配してたの、ヒチョル兄さんなんだよ」
「え・・・」

「あ、お、俺も・・・そろそろ仕事だから、行くね」

 もしかしたら、ヒチョルから口止めされていたのかもしれない。言った後、一瞬しまったというような表情を見せたドンヘを俺は見逃さなかった。
 そして、慌てて逃げるように、バタバタと走り去っていくドンヘの目には涙が浮かんでいた。誰よりも仲間想いのドンヘ、唇を噛みしめて、もしかしたら俺やヒチョルのことを気遣って、本当はもっと言いたかったのを我慢したのかもしれないのに。

 相手が俺じゃなかったら、もしかしたら殴られていたかもな。

「嗚呼、これはやってしまったよな・・・・・・」

 そのあと、何とか看護師さんに頼み込んで、携帯電話の使用だけは許してもらったイトゥクは、直ぐにシンドンに連絡を取った。直ぐに冗談めかしく、お前スマホ禁止だろ!!って返信が来たので、スルーすべきか悩んだんだけど。
 病院に来れないかな?って返事をすると、タイミングが良かったらしく、丁度病院に向かっている所だから、大人しく寝てろって返ってきた。

 もしかしたら、シンドンだったら俺、本当に殴られるかもなぁ。そんなことを思いながら、彼が到着するのを待った。

 

 

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