お説教。

「っていうか、お前さ、ドンへの気持ちなんて一度も考えたこと無かっただろ」
ヒチョルがここぞとばかりに、今まで溜まっていた鬱憤をヒョクにぶつけてきた。当然、何一つ身を守ることが出来ないヒョクは、ヒチョルが投げつけてくる言葉の石を、全て全身で受け止めるしかない。
「ドンへの・・・?」
「アイツ解りやすいからな。多分お前と深いカンケイになった後、彼女なんて一切作ってないぞ」
「そうそう、だからさ、ヒョクが彼女出来たっていう度に、耳と尻尾がシュンってだれるんだよね」
「本当だよな!あ、やっぱお前にも見えてた?」
ドンへはやっぱ犬だよな!なんて笑いながらイトゥクとヒチョルが話しているけれど、俺は、何も言葉が出て来なかった。だって、俺たちは既に両思いで、でもお互いに関係を壊したくないから、付き合う事に対して、消極的になっていただけだなんて。
俺は自分の気持ちを、カモフラージュを作ることで誤魔化していたけれど、でもドンへはきちんと、誠実に自分の気持ちと向き合っていたんだ。アイツのほうが、何倍も、ううん何十倍も大人だ。
「まぁ、だからこれからはさ、ドンへを大切にしてあげてよ」
「今度泣かせたら、俺が奪うからな!!」
「・・・はい」
普段は「お兄ちゃん」の言う事なんて、あまり聞かないけれど、今日だけは素直に心に受け止めないといけない。今日会ったら、ドンへにきちんと謝らないといけないな、とか思いながら、今日は恋人として会えると思うだけで、心があったかくなった。

 

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