夢じゃないよね。

「俺がさ、色んな女の子と付き合う度に、ドンへが傷付いていたなんて、知らなかった」
「・・・っ、それ・・は・・・」
一生誰にも知られないまま、お墓まで持っていきたかった俺の醜い嫉妬の感情を、まさかヒョクに知られるとは思わなかった。これがドラマの撮影とかだったら、何言ってるんだよ。ヒョクの勘違いだよ。って、さわやかな笑顔を見せながら、さらりと台詞を言って、ヒョクを騙してみせるのに。
大好きな人に、そんな泣きそうな顔をされながら謝られたら、俺だって泣きそうになっちゃうよ。
「ドンへ・・・ゴメンな」
「うう・・・ヒョクぅ・・・」
こんな真剣な表情、2人きりの時に見るのは初めてかもしれない。そっと引き寄せられて、ヒョクの胸の中にうずくまる。ドキドキと脈打つヒョクの心臓の鼓動が少し早くて、ヒョクも緊張しているんだなって事が伝わってきて、自然とドンへも緊張が高まっていく。そして、そっと視線を合わせると、ゆっくりと唇を重ねて、そのままベットに倒れこんだ。
「ヒョク・・・あのさ、夢じゃないよね?」
「うん・・・夢じゃないよ」
「俺さ、ヒョクとこんな風に付き合えるなんて、思っても居なかったんだ。だってさ、好きだって言ったら、ヒョクが俺から離れていくんじゃないかって思ったら、ものすごく怖くて。そう考えたら、傍に居られるだけで幸せなんだから、これ以上、何も望んだらいけないって思ってたんだ」
「ドンへ・・・」
「だからさ・・・俺、すっごい今、幸せだよ。好きな人にちゃんと好きって伝えられて、ヒョクが俺の気持ちに答えてくれたんだから」
だからもう、俺のせいでこんな風に悲しい顔を見せるのはやめて欲しい。心からそう思ったんだけれど、俺の言葉を聞いて、滅多に人前で泣かないヒョクが、ポロリと涙を零す。小さい声でもう一回ゴメンって呟くから、慌ててドンへがヒョクを引き寄せて、ギュウ。と、抱き締めた。

 

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